最近、会社の中で「サンクスカード」という取り組みを始めています。名前の通り、社員同士で「ありがとう」を伝えるカードです。
正直に言うと、最初から自信満々で始めたわけではありません。
でも、この取り組みは鈴木電機の文化にしていきたい。そう思っています。
人のいいところを見つける
「感謝が回る会社」というと、ただ「ありがとう」をたくさん言い合う会社を想像するかもしれません。
でも、自分が考えているのは、もう少し違います。
「人のいいところを見つける」こと。
これが、意外と難しいんです。
仕事をしていると、どうしても「やってもらって当たり前」になってしまう。
夜間工事に行ってくれる。資料を準備してくれる。現場で対応してくれる。誰かが困っているときに手伝ってくれる。
本当はありがたいことなのに、日常の中では見過ごしてしまう。
「なんでやってくれないんだ」「どうして気づかないんだ」
そんなふうに、不平不満のほうが出やすくなる。
同じ出来事でも、見方を変えれば、「やってくれてありがとう」になるはずです。
感謝を伝えられた人は、もちろんうれしいと思います。けれど、それ以上に大事なのは、伝える側だと思っています。
感謝を伝えるということは、相手の働きに気づくということです。
当たり前だと思っていたことを、当たり前ではないと受け止めることです。
それを続けることで、伝える側の感性も磨かれていく。
だから、サンクスカードは「もらう人のため」だけではなく、「書く人のため」でもあるんです。
紙に書くから、残る
サンクスカードは、複写式の小さなカードです。
誰かに向けてメッセージを書いて、破いて渡す。自分が何を書いたのか、控えが残るようになっています。

実際には、こんな感じのことを書きます。
「夜間工事で対応してくれてありがとう。帰ってくるときは気をつけて帰ってきてください」
本当に、日常の一場面です。夜間工事は大変です。自分も経験があるので、よくわかります。夜中に現場へ行く。遠方のこともある。無事に帰ってくるまで気も張っている。
そういう仕事をしてくれた社員には、できるだけ書くようにしています。
「お疲れさま」と言うだけでもいいのかもしれません。でも、言葉はすぐに消えてしまう。
紙に書くと、残ります。わざわざ書く。わざわざ渡す。その一手間に意味があるんだと思います。
実際、自分が渡したカードを、机の上のファイルに大切に入れてくれていたことがありました。
「あ、ちゃんと持っていてくれるんだ」
感謝は、渡された側だけでなく、渡した側にも返ってくる。そういうものなのかもしれません。
また、サンクスカードとは別に、誕生日カードも書いています。社員の誕生日に、自分が葉書を書くんです。
なぜ葉書なのか。理由は、家族が見るからです。家に届いた葉書を、家族が見る。
「こんな会社で働いているんだね」「社長からこんな言葉をもらったんだね」
そう思ってもらえたら、家族も会社の理解者や応援者になってくれるかもしれない。
少し打算的に聞こえるかもしれません。ただ、これは大事なことだと思っています。

社員は、一人で働いているわけではありません。その人の後ろには家族がいる。家族が応援してくれる環境があれば、社員も頑張れる。
だから、手書きで伝える。わざわざ書く。それを大事にしたいんです。お客様にも葉書を書くようにしています。これも、まだまだ習慣化が難しい。
でも、メールではなく手書きの葉書が届く。そこにはやっぱり価値があると思います。
自分は、まだまだ苦手です
とはいえ、最初にも書いた通り、自分はこういうことが得意ではありません。
どちらかというと、ドライなところがあると自分では思っています。
一部の人には伝えるけれど、全員にまんべんなく伝えるのは得意ではない。忙しいと、つい飛ばしてしまう。見ているつもりでも、それを言葉にして伝えられていない。
ただ、社長だからこそ、このままではいけないと感じているんです。
会社の中で、一番サンクスカードを書かなければいけないのは、自分です。
幹部にも「月20枚くらいは書こう」と伝えていますが、まずは自分がやらないといけない。本当は、もっとやっている会社では、月30枚、40枚、50枚と書く人もいるそうです。
自分はまず、月20枚から。
習慣づけるために、朝の時間にサンクスカードを書く、と決めるのがいいかなと、最近は考えています。
日中に「あ、これ書こう」と思っても、忙しいと流れてしまうんですよね。だから、メモしておいて、朝にまとめて書く。サンクスカードを書く時間を、ルーティーンにする。
これは、自分にとっての特訓でもあります。
「今日、誰が頑張っていたか」「誰に助けられたか」「何をありがたいと思ったか」
それを自然と探すようになれたら、当たり前だと思っていたものが、少しずつ当たり前ではなくなっていくのだと思っています。
うまく書ける人がいる
社内にも、しっかりサンクスカードを書いてくれる人がいます。
それが、すごいんです。
一人は、もともとそういうことが得意なのかなと思う人。もう一人は現場の社員で、そんなにマメなタイプには見えなかった人です。
でも、結構しっかり書いている。こういう取り組みを始めると、意外な一面が見えてきます。
「あ、この人はこういうことを大切にできる人なんだな」
そういう発見がある。内容は、特別なものではありません。
「勉強会でいろいろ教えてくれてありがとう」「これをやってくれてありがとうございました」
そんな普段のことをちゃんと見つけて、言葉にしているのが素晴らしい。
会社の方針としてやろうとしていることに対して、素直に取り組んでくれる。そういう社員は、本当に貴重だと思います。
社長との関係も、手紙で変わった
自分には、「書くこと」の力を感じた経験があります。
以前、父である先代社長と、あまり関係が良くなかった時期がありました。
考え方が合わず、ぶつかることもあった。
そんなとき、ある研修で言われたんです。
「毎日、社長に手紙を書きなさい」
それを、1年くらい続けました。毎日書いて、毎日渡す。
最初は、簡単ではありませんでした。でも、やってみると関係性がかなり改善したんです。
今までできなかったことをやる。そのこと自体に、ものすごく価値がある。
だから、サンクスカードも同じだと思っています。
やり続ければ、必ず良くなる。そこには、少し確信があります。
感謝は、人が育つ土壌になる
サンクスカードを通して育つものは何か。
一つは、気づきだと思います。気づきは、成長の原点です。
感謝を続けることで、気づく力と素直さが育つ。そこに、人が成長する土壌があると思っています。
もう一つは、素直さです。感謝って、素直じゃないとできないと思うんです。
「ありがとう」と言えること。人の良さを認められること。会社が大切にしていることを、自分もやってみようと思えること。
そういう素直さがある人は、どんどん成長していける。だから、感謝が回る会社は、人が育つ会社になると思っています。
また、受け取る側にとっては、感謝されることは、承認されることでもあります。
「見てくれている」「ちゃんと気づいてくれている」
社長は、社員を承認しなければいけない。上から下へ、どんどん承認していく。そういう組織をつくる必要がある。
つい「仕事をして当たり前」「結果を出して当たり前」と見てしまいがちです。でも、そこで一歩踏み込んで、「ちゃんと見ているよ」「ありがとう」と伝えることが大事なんだと思います。
正直、自分はまだまだ承認を出せていないと思います。忙しいと飛ばしてしまうこともある。
だからこそ、丁寧に承認できる社長になりたいと思っています。
まず、自分が書く
この文化が根づくかどうかは、自分次第だと思っています。
社長がどれだけ書くか。社長がどれだけ直接渡せるか。社長がどれだけ社員を承認できるか。
そこにかかっていると思います。だから、まずは自分が書く。
今日書くとしたら、環境省の事業で社員が褒められたことについて書きたいですね。
「一生懸命やってくれてありがとう」
小さなことかもしれません。でも、そういう小さな積み重ねが、会社の空気を変えていく。
感謝が回る会社。承認が回る会社。人が育つ土壌のある会社。
まだ完成していません。むしろ、始まったばかりです。
だからこそつくっていきたい。
「ありがとう」が自然に巡る会社を、鈴木電機の文化にしていきたいと思っています。